わが家のペットは、茶色(正確にはレッド)のトイ・プードルでした。上の娘が3歳、下の娘が10ヶ月のときに我が家にやってきました。両手のひらにおさまるぐらい小さくて、まるまって震えていたのをよく覚えています。私が携帯電話で写真を撮って見せると、上の娘が「チョコみたい」と言いました。ショコラティエをしている私の妹がくれた手作りのチョコレートで、よく似た色形のものがあったのです。たしかに私が撮った写真は、犬だか毛玉だかわからない茶色のまんまるで、一家で大笑いになり、そのまま「チョコ」という名前に決まりました。
その日から、チョコは娘たちの成長とともに、我が家の一員として育ってゆきました。娘たちに動物をいたわる気持ちを育んで欲しくて飼ったのですが、私にとっても三番めの娘のようなものでした。
最初の半年で、身体はどんどん大きくなり、立派な犬になりました。犬は集団のボスの、一番目の子分の位置に自分を置くといわれていますが、主人が帰ってくると主人にべったり、仕事で出かけると私にべったり、だれかお客さんが来ると、その方のそばを離れないという状況。その場で、誰が一番力を持っているか、判断するんですね。成長しても、下の娘だけは自分の子分だと思っているようなところがあり、この2人はよく喧嘩をしていました。そんなふうにして、気づいたらあっという間に時間が過ぎていきました。
我が家にやってきて6年がたったころ、だんだんと寝床にうずくまっていることが多くなったチョコ。「もう年なのかな」と娘。おかしいなと思っていたら、咳をするようになりました。そして、あわてて、病院に連れて行ったのです。
病院に預けた翌日に連絡があり、憎帽弁閉鎖不全症を患っていることがわかりました。静かに深部で進行する病気なので、症状が出たときには手遅れであることが多い、あとどれぐらいもつかわからない、との説明。原因はわからず、遺伝もありうるとの話。それから半年後に、朝起きたら、チョコは静かに眠るように亡くなっていました。小さな毛玉のように、我が家に転がりこんできたときには、こんなに早く別れが来るとは、予想もできませんでした。